虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

狭心症・心筋梗塞とは

心臓の役割

心臓は約60~100回/分、約10万回/日拍動しています。

心臓から押し出された血液は、動脈(血管)を介して全身の臓器・組織に送り込まれます。

各臓器・組織は、心臓から供給された血液中の栄養・酸素を利用することで活動をしています。

心筋に栄養・酸素を供給する冠動脈

心臓の筋肉に酸素・栄養を供給する「冠動脈」は、大動脈の付け根から右冠動脈・前下行枝・左回旋枝の3本存在し、心臓全体の筋肉に栄養・酸素を供給しています。

狭心症とは

糖尿病・脂質異常症・高血圧・喫煙・過度のストレスなどによって発生した冠動脈内の粥状硬化により、血管内腔が細くなり血液の流れが悪くなることで、心筋に十分な酸素が供給されなくなり、心筋が酸欠に陥った際に、胸が苦しくなる症状をいいます。

狭心症の症状は

①どんな時に起こる?

・安静時は、殆ど症状はありません。

・坂道を上る、階段を上る、駆け足をする、自転車をこぐ、重いものを持つ、などの労作・運動をした時に症状が発生します。

➁どんな症状?

労作時に、『胸の圧迫される』『胸の締め付けられる』『胸が痛い』『背中が痛い』などが典型的な症状です。

・放散痛とは?

 労作時に『喉の辺りが締め付けられる』『歯が痛くなる』『肩が痛くなる』等、胸の周辺以外の部位で症状が起こった場合も狭心症を疑います。

心筋梗塞とは

冠動脈の内腔が狭い(細い)状態(狭心症)がベースにあり、そこに血栓が生じることで冠動脈が完全閉塞します。

この時に、心筋の酸欠症状として胸痛や背部痛などが起こります。

冠動脈が完全閉塞して数時間すると、心筋に栄養が届かないことで心筋細胞の壊死が始まり、心筋が動かなくなり、急性心不全、ショック、致死性不整脈、最悪の場合、死に至る危険な状態を引き起こします。

直ちに緊急治療を要します。

冠攣縮性狭心症(異型狭心症)

・冠攣縮性狭心症の典型的症状は、夜間~明け方の就寝中に胸の痛みで目が覚めて、目が覚めて30~60分程度で症状が治まります。日中の安静時に起こることもあります。

・喫煙・過度の飲酒・脂質異常症・ストレスなどが原因とされ、動脈硬化で血管内皮機能障害が起こることで、冠動脈の攣縮(収縮)が起こり、血管が細い状態が作られることで、一時的な胸痛が起こります。

血管の攣縮が治まって、血流が元に戻ると症状も消失します。

労作時や運動時に起こる一般的な狭心症とは症状が異なり、夜間~明け方の就寝中や安静時の起こるため、異型狭心症と呼ぶ場合があります。ニトロペンなどの血管拡張剤が著効します。

確定診断には、冠動脈造影検査中に冠攣縮誘発試験(アセチルコリン負荷)を行います。ホルター心電図で捉えられる場合もあります。

治療は、Ca拮抗剤などの内服薬で、冠攣縮を予防します。

微小血管狭心症・冠微小循環障害(CMD)

発作的に安静時や労作時に持続する胸部違和感(胸の違和感や絞扼感)を生じる疾患。

冠動脈造影や冠動脈CTで描出されない末梢の0.3㎜以下の微小冠動脈の攣縮(血管の痙攣)や血管内皮細胞障害に伴う拡張障害が原因とされます。

これまでは、冠動脈造影で狭窄が無く、アセチルコリン負荷検査で冠攣縮が誘発されないことで、原因不明の胸痛とされることが殆どでしたが、近年原因の分からない胸痛症状を起こす方の一部に、これが原因で胸痛が起こる方がいることが分かってきました。

女性の場合は、エストロゲンが血管の拡張に関与すると云われ、特に閉経前後でエストロゲンの減少により血管が攣縮(収縮)しやすくなることで、胸痛が起こるといわれています。(30~60代で起こります)

診断は、カテーテル検査中に冠攣縮誘発試験(アセチルコリン負荷)や微小冠動脈の機能測定検査を行います。

治療は、Ca拮抗剤やニコランジルなどの血管拡張剤、また微小血管の拡張障害の場合はβブロッカーの内服を行います。

狭心症の検査

少し歩いただけで胸が苦しくなる。休み休みでないと胸が圧迫される感じがして歩くのがしんどい、胸が痛くなるなどの症状がある場合は、早めの検査をお勧めします。

狭心症の典型的な症状は、「胸が圧迫される」「胸が締め付けられる」「胸や背中が痛くなる」です。

また、放散痛といって、前胸部以外の場所に症状がでる場合もあります。

労作時に、「喉~首の辺りが絞めつけられる」「歯が痛くなる」「肩や上腕が痛くなる」といった症状が出る方も注意が必要です。

胸部レントゲン・心電図

・心肥大や心不全の評価、心筋の虚血の評価、不整脈の診断をする基本的な検査です。

運動負荷心電図検査

・トレッドミル

・エルゴメーター

・マスター心電図

 等の運動負荷検査法があります。

心臓超音波

・心臓のポンプ機能の評価

・弁膜症などの評価

冠動脈CT

造影CTを行うことで、冠動脈の狭窄、プラークの評価を行います。

精度の高い検査です。

心筋RI

アイソトープを使用し、心筋の血流、心機能の評価を行います。

精度の高い検査です。

冠動脈造影検査(確定診断)

入院で血管造影検査(心臓カテーテル検査)を行います。

非侵襲的検査の結果で、狭心症の可能性が高い場合に行います。冠動脈の狭窄を認めた場合は、同時に血管内治療(PCI)を行います。

心筋梗塞の場合は、緊急カテーテル検査および治療を行います。

血管造影の結果によっては、冠動脈バイパス手術を選択する場合もあります。

ご来院される患者様へ

・どの病気にもいえることですが、早期発見・早期治療が重要です。

・心疾患は、心不全を起こしてから来院された場合には、緊急入院となってしまうケースも少なくありません。

・息切れ、動悸、足の浮腫み、胸の痛みは、心臓病のサインです。

・心不全も軽症の段階であれば、外来治療も十分可能です。

・症状の軽いうちの来院をお勧めします。健康診断で異常を云われた方も、お早目の来院をお勧めします。

・また、当院は下記の医療機関と医療連携を行っています。当院でできない検査が必要な場合、カテーテル検査や手術等の必要な場合に、下記の連携医療機関への紹介を行っております。

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