虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)について

狭心症とは?

心臓は1日に約10万回拍動しています。

心臓は筋肉で構成された血液を拍出するポンプです。


心臓には、心臓の筋肉に血液を供給する3本の血管『冠動脈』があります。

『冠動脈』が動脈硬化で細くなると、心筋の酸欠症状として、胸が苦しくなる病気です。


糖尿病、高脂血症、高血圧、喫煙などが大きな原因になります。


◉どんな時に症状が?

『階段を登っている時』『坂を上っている時』『運動をした時』『急に寒いところに出た時』など、基本的に動いたときに症状が出ます。

◉どんな症状?

心拍数が増えるくらいの体を動かした時に、『胸が圧迫されるような感じ』『胸が締め付けられるような痛み』『背中が痛い』『喉が締め付けられるような感じ』『背中が痛くなる』『歯が痛くなる』の症状が出ます。

上記の症状が出ると、胸が苦しいので当然体を休めます。休んで心拍数が落ち着いてくると、症状が消失します。これが『労作性狭心症』です。

心筋を栄養する血管が動脈硬化で細くなっていると、安静時の心拍数が少ない時は心筋の酸素消費量が少ないため症状はありません。体を動かして心拍数が増えたときに、血管が細いため十分な酸素を供給できないため、心筋が酸欠になった結果として、胸痛・胸部圧迫感などの症状が出ます。

心臓に血液を供給する冠動脈が完全に閉塞して血液の流れが途絶えてしまうと、心臓に血液・酸素が供給されなくなり、やがて心筋が壊死してしまいます。これが急性心筋梗塞です。


また労作性狭心症とは別に、異型狭心症という病気があります。(冠攣縮性狭心症という呼び方もします。)

これは労作時や運動時には殆ど症状が無く、『明け方寝ている時に胸が痛い、胸が苦しくて目が覚める。胸痛で目が覚めてしばらくしたら治る。』といったエピソードで、この病気を疑います。

この病気は、心臓に血液を供給する冠動脈が異常収縮(攣縮)することで、血管内腔が一時的に狭くなり血液の流れが途絶えてしまい、狭心症発作、心筋梗塞を起こします。ニトロや血管拡張剤の内服で冠動脈を拡張させることで症状を抑えることが出来ます。

狭心症の検査

少し歩いただけで胸が苦しくなる。休み休みでないと歩くのがしんどい、胸が痛くなるなどの症状がある場合は、早めの検査をお勧めします。

狭心症の典型的な症状は、胸の真ん中の圧迫される感じ、締め付けられる感じです。

しかし、放散痛といって、前胸部以外の場所に症状がでる方もいらっしゃいます。

労作時に急に背中が重くなる、痛くなる。労作時に肩が急に重くなって痛い感じ。労作時に喉~首の辺りが絞めつけられるような感じ。労作時に歯が痛くなるような感じ。といった症状が出る方も注意が必要です。

〇心電図

・心筋の虚血性変化の有無、不整脈の有無を確認をする基本的な検査です。

〇胸部レントゲン

・心肥大の有無

・心不全の有無

・肺の異常の有無

を確認する基本的な検査です。

〇心臓超音波

心臓の機能を正確に評価をするために、非常に重要な検査です。

・心筋の厚さ、ポンプ機能の評価

・弁機能(弁膜症)の評価

〇冠動脈CT

胸部症状のエピソード、上記の検査で狭心症を強く疑った場合に、造影剤を用いたCT検査を行い、3D-CTで冠動脈の狭窄の有無を確認します。

この検査で、冠動脈に明らかな狭窄を認めた場合は、入院して冠動脈血管造影検査(心臓カテーテル検査)で確定診断を行います。高度狭窄があった場合には、検査と同時にカテーテル治療を行います。(冠動脈形成術(バルーン拡張術やステント植込み術)

冠動脈の病変の状態によっては、冠動脈バイパス手術を選択する場合もあります。


※冠動脈CT検査を行う場合は、連携医療機関への紹介を行っています。(※冠動脈CTは外来で可能な検査です。)

※他の検査方法として、運動負荷検査(トレッドミル・エルゴメーター)や、心筋RI検査(血流シンチグラフィ)で心筋虚血の評価を行う場合もあります。

〇冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)

ここまでの検査で、狭心症の可能性が確実になった場合に、入院して冠動脈造影検査を行って確定診断をします。

手首の動脈、または足の付け根にある動脈からカテーテルを血管内に挿入し、心臓に血液を供給する冠動脈の血管造影検査を行います。(入院検査)

冠動脈造影検査で、冠動脈に有意狭窄があれば確定診断になります。

症状の原因となる冠動脈の高度狭窄があった場合には、検査中に、そのまま血管内治療(バルーンによる血管拡張術・ステント植込み術)を行います。

冠動脈の病変の状態によっては、カテーテル治療ではなく、バイパス手術を選択する場合もあります。

大動脈の根元にある冠動脈の入口部にカテーテルを挿入し、冠動脈内に造影剤を注入すると冠動脈が描出されます。(※上記は右冠動脈(正常)です)       

不整脈について

心臓の電気回路について(刺激伝導系)

〇心臓は、心筋という筋肉で出来ていて、筋肉は電気刺激を与えると収縮する性質を持っています。

心臓には『洞結節』という電気パルス発生装置(ペースメーカー)が生まれつき備わっています。

心筋内には電気回路が張り巡らされており、心臓が血液を押し出すポンプとしてうまく動くようになっています。

『洞結節』から1分間に60~100回規則正しく電気パルスが発生することで、心臓がそれに応じて同じ回数だけ規則正しく収縮します。


『洞結節』から発生した電気パルスは、心筋内に張り巡らされた電気回路に沿って心臓全体に電流が伝わることで、心臓全体を収縮させて、心臓内腔の血液を大動脈に向けて押し出すポンプとして機能します。 

正常な電気回路以外の場所から、異常な電気パルスが発生すると不整脈になります。

また、『洞結節』(電気パルス発生装置)がうまく電気パルスを出せなくなったり、電気回路の伝導障害(ブロック)が生じると、脈拍が遅くなる『徐脈』という現象が起きます。

不整脈の種類

①期外収縮

『瞬間的な胸の違和感・胸が一瞬詰まるような感じ、脈の飛ぶ感じ』

発生部位によって、上室性期外収縮、心室性期外収縮と分類されます。

最も多い不整脈で、若い方にも多くみられます。

一般的にはストレスや疲労により発生しているものが多く、経過観察で良い場合が多いですが、動悸の頻度が多い場合は内服治療を行います。

心室性不整脈が頻発または連発する場合は、要注意です。


②頻脈性不整脈

脈拍が著しく頻脈になり、『ドキドキして胸が苦しくなったり、胸が痛くなる』場合もあります。

頻脈により血圧がさがると、『めまい』を伴う場合もあります。著しい頻脈が長く続くと心不全になることもあります。心室性不整脈では、『めまいや失神発作』を起こす場合があります。

『発作性心房細動』『心房粗動』『発作性上室性頻拍症』『心室頻拍症』などがあります。


③徐脈性不整脈

脈拍が著しく遅くなることにより、脳を含めた全身に十分な血液が供給されないため、『めまいや倦怠感、動悸・息切れ』を感じることもあります。『心不全』になったり、『失神発作』を起こすこともあります。

代表的な病気として、『洞不全症候群』『房室ブロック』などがあります。

重度の徐脈で、『心不全』や『失神発作』を起こすようであれば、『ペースメーカー植込み術』を行う場合があります。


④心房細動

脈拍の間隔が不整な状態になります。『発作性心房細動』は、頻脈になることが多いので動悸を感じることが多いですが、一方で『慢性心房細動』になってしまうと、自覚症状を感じないこともあります。

心房細動の問題点として・・・

心房内の血流に澱みができることで心臓内に血栓が生じ、その血栓が大動脈を介して心臓外にでてしまうと、血栓症を起こします。脳の血管に詰まってしまうと重大な脳梗塞を起こすことがあります。心房細動が分かった時点で、抗凝固剤(ワーファリンや経口抗凝固薬(DOAC))を内服して血栓予防を行います。

内服薬で脈拍のコントロールおよび、抗凝固剤による血栓症予防が治療の主体にになりますが、根治的治療としてカテーテルアブレーションを行う場合もあります。

不整脈の検査

〇心電図

・心筋の虚血性変化の有無、不整脈の有無を確認をする基本的な検査です。

〇胸部レントゲン

・心肥大の有無

・心不全の有無

・肺の異常の有無

を確認する基本的な検査です。

〇心臓超音波

心臓の機能を正確に評価をするために、非常に重要な検査です。

・心筋の厚さ、収縮能(ポンプ機能)の評価

・弁機能(弁膜症)の評価

・心臓内の負荷の評価

〇血液検査

不整脈には様々な原因がありますが、心不全や甲状腺ホルモン異常が関与する場合も見られ、BNP(心不全マーカー)や甲状腺ホルモンをチェックする場合があります。

〇24時間ホルター心電図

『動悸』『胸の痛み』『胸の重い感じ』『胸の瞬間的な違和感』『めまい』等の症状は不整脈や狭心症が原因のことがあります。

外来での心電図記録では診断がつかないことが殆どです。

不整脈は、『動悸などの症状のあるその時』に心電図を記録できなければ、その証拠を捉えることができません。

そこで、携帯型心電図記録装置を装着してお帰りいただき、お仕事や家事も含め普段と全く同じ生活をしていただきます。約24時間の心電図記録をすることで、不整脈や狭心症の発作を捉えやすくし、診断・治療につなげることが可能です。


〇ホルター心電図検査の流れ(取付日〜取外し日で、連続2日間の来院が必要です。)

①外来でホルター記録装置の装着

記録装置を装着したら、出来る限り普段通りの生活をしていただきます(約24時間記録(24時間未満でも可))

(仕事・家事・飲酒・シャワーも可)(※防水型なのでシャワーも可能です)

翌日外来受診し、記録装置の取外し。そのまま10~15分程度お待ちいただき、同日に結果説明となります。

不整脈の治療

①期外収縮

一般的には経過観察になることが多いですが、動悸症状を頻繁に感じる場合は、内服治療を行います。

不規則な生活・睡眠不足・疲れ・ストレス・飲酒などが引き金になることが多く、生活習慣の改善が非常に重要です。


②心房細動

頻脈にならないよう脈拍のコントロール、血栓症の予防目的でワーファリンや経口抗凝固薬の内服を行います。


③徐脈性不整脈

経過観察となることが多いですが、徐脈が原因で『心不全』『意識消失・失神』などが起こる場合は『ペースメーカー』の適応になります。


④電気生理学的検査(EPS)/カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)

足の付け根や首の血管からカテーテルを心臓内に挿入していきます。

カテーテルの先端に電極がついており、心臓内の電気的現象を記録したり、電気刺激することで、不整脈の発生源を突き止めます。

不整脈の発生源が確認されたら、アブレーション用カテーテルで不整脈の原因となっている部分に高周波電流を流して、原因となっている部位の焼灼を行います。

上室性頻拍症・WPW症候群・心房粗動・心房細動・心室頻拍などの疾患が対象になります。


心臓病以外の原因で起こる動悸について

動悸や頻脈の症状は、心臓とは別に、『甲状腺の病気』や『更年期』、『貧血』などの要因が関与していることもあります。

甲状腺ホルモンが過剰になると、甲状腺機能亢進症(代表的な病気としてはバセドウ病など)を発症します。

バセドウ病を発症すると、甲状腺ホルモンによって心臓の興奮状態が1日中持続するため、少し歩いただけで動悸で苦しくなる、夜に静かにしている時も頻脈や動悸の症状を感じることになります。

重度の場合は心房細動という頻脈性不整脈を起こす場合もあります。

甲状腺ホルモンは、血液検査で簡単に確認することが出来ます。

甲状腺ホルモンが原因の場合は、その治療が主体となります。


また、閉経前後の女性は女性ホルモンの減少により、更年期症状としてホットフラッシュや動悸などの症状が出現することがあります。

更年期症状として動悸が起こっている場合は、当院では漢方薬を用いて症状を緩和させる治療を行うこともあります。

ご来院される患者様へ

・どの病気にもいえることですが、早期発見・早期治療が重要です。

・心疾患は、心不全を起こしてから来院された場合には、緊急入院となってしまうケースも少なくありません。

・息切れ、動悸、足の浮腫み、胸の痛みは、心疾患や肺疾患のサインです。

・心不全も症状の軽いうちであれば、外来治療も十分可能です。

・症状の軽いうちの来院をお勧めします。健康診断で異常を云われた方も、お早目の来院をお勧めします。

・また、当院は下記の医療機関と医療連携を行っています。当院でできない検査が必要な場合、カテーテル検査や手術等の必要な場合に、下記の連携医療機関への紹介を行っております。

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